チェスのタクティクス問題はなぜ難しいのか

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毎日少しづつ戦術問題(tactics)を解いている。簡単な問題はまあまあ解けるのだが、少し難しい問題になると間違ってしまう。

将棋の次の一手問題や詰将棋と違う難しさが、タクティクスにはあるように思う。その違いについて現在感じていることをメモしておく。

問題の意図がわからない

将棋の場合、問題の意図は出題時に明確になっていることが多い。例えば詰将棋なら王手の連続で詰ませれば良いし、終盤問題は王手かそれに類する手を考えれば良い。次の一手問題は若干幅が広いが、大抵は駒得(あるいは寄せ)に絡む問題だ。問題の意図が全くわからないことは少ない。

チェスのタクティクス問題にはこれらの要素が全て含まれている。ある問題は駒得が正解だし、ある問題はキングを詰ませるのが正解だ。ポーンを成ってクィーンを作る(作らせない)問題もある。

問題を解く時に、どの答えが正解なのかを考えて解く必要がある。意図とは違う方向を考えていても正解にはたどり着かない。散々考えた挙句、単に相手駒を取るのが正解だったりする。

将棋の駒は足が遅い

将棋の駒はチェスに比べると足が遅い。チェスはポーンですら最初は二歩進める。将棋の駒は前に前のは得意だが後ろには戻りにくいし、戻れない駒も多い。

そのせいで勝負が局地戦になる傾向がある。囲い崩し(特に穴熊戦)はその最たるものだ。盤面全体に及ぶ戦争はあまり起こらないので、特別に「攻防の角」などという名前が付くぐらいだ。

局地戦が多いので、問題も盤面の一部だけを使うことが多い。詰将棋は5×5程度の盤面で出題されることもある。問題に関係しない部分は空白のままになっている。盤面には自玉が置かれていないことも多い。攻守が関係するときは「双玉問題」や「詰めろ逃れ」のように特別な呼び名がある。

局地戦は戦いの目的が明確なので、出題される問題も自然に意図が明確になる。


チェスの駒の大半は大駒だ

チェスの駒はポーンとキングを除いて、将棋での大駒(飛車角)のような強い駒ばかりだ。ルーク・ビショップが2個づつ、さらにクィーンもある。強い駒が前にも後ろにも同じように進めるので、盤面全体を使った戦いになりやすい。常に盤面全体を見て考えないといけない。端っこにいる駒でも中央の戦いや相手キングの寄せに役立ったりする。

当然、出題される問題も盤面全体を使うし、双方の駒がちゃんと配置されている。将棋のように戦いの目的が細かく分けられない。タクティクス問題も意図で分類されないわけだ。

その代わり(?)、問題で使う手筋(テーマ)は細かく分類されている。chess.comのタクティクスでは、問題ごとにテーマが設定されていて、テーマごとの正解率が分析できる。自分が不慣れな手筋を把握して、学習の参考にすることができる。このような考え方は将棋にはほとんどない(と思う)。

チェスのタクティクス問題はなぜ難しいのか

結局のところ、チェスと将棋のゲームとしての差が問題に反映されているわけだ。もちろん将棋的な知識は多いに役に立つのだが、役に立たない局面も多い。それなのに、将棋を先に覚えてしまったが故に、チェスの問題を将棋的に解こうとするのが間違っているのだと思う。ゲームごとに最適な考え方(メタ知識?)があって、それをマスターする必要があるのだろう。

同様に、中国象棋の残局問題(終盤問題)も私には難しく感じるが、それも同じ理屈なのかもしれない。

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